灯りを消せ!

河合隼雄講話集「こころの扉」副読本から

私が子どもの頃に読んだ、大好きな話があります。何人かの人が漁船で海釣りに行きました。ところが夢中になっているうちに、夕闇が迫り、潮には流され、方角がまったくわからなくなってしまいました。やがて真っ暗になり、みんなは必死で灯りをかかげるのですが、何も見えません。そのとき一人が「灯りを消せ!」と言うのです。みんなは「何をバカな」と思うのですが、その人の気迫に押されて灯りを消しました。すると、次第に暗闇に目が慣れ、陸地のある方がポーッと明るいことに気がついたのです。

 

迷ったときは河合隼雄さんの言葉が聞きたくなるものです。これは10年も前に買ったCDに収録されているのですが、私もこの話が大好きです。

自分はどこに向かって進めばいいのか?私は目先の灯りにとらわれ過ぎていたのかもしれません。灯りを消し暗闇の中に放り出されることは、不安で怖いものですが、一度灯りを消すことによって、かすかに遠くの灯りが見えるのかもしれません。